第120章

 足早に歩く古田静の姿は、到底妊婦とは思えない。まるで恋人にでも逢いに行くかのような急ぎようだった。

 後を追って一階へ下りた島宮奈々未だったが、角を曲がった途端、ふっとその姿を見失ってしまった。

 病院の中庭は広く、茂みや木々が多い。おまけに日が暮れてきたため、すぐに見つけ出すのは困難だった。

 周囲をぐるりと見渡しても人影はない。島宮奈々未は諦めて病室へ戻り、そこで待つことにした。

 病室のソファに腰を下ろし、適当に雑誌を手に取ってめくる。一時間近く待って、ようやく古田静が戻ってきた。

 衣服の乱れを直しながらドアを押し開けた古田静は、病室に座っている島宮奈々未の姿にぎくりと身...

ログインして続きを読む